苔料理専門店に憧れる。読書の夏。


読書の夏。

山に森に苔を見に行こうかと思っていたけれど、暑い日は冷房の効いた涼しい部屋で。



「原稿零枚日記」著:小川洋子


先月開催した大阪でのイベントで、苔本棚にあった一冊。
コケ友さんが書いた書評を読めば、苔料理専門店なるものが出てくるというではないか。密やかにジャゴケ食の会を企画しているものとしては、読んでおかなければならない一冊。



「苔料理専門店」はいきなり一日目に出てくる。

ミズゴケから搾った水で作られた食前酒、サヤゴケの燻製・ギンゴケの酢味噌和え・ムクムクゴケの蒸し物・ヒメジャゴケの煮つけ・タマゴケのお椀・ウマスギゴケの天ぷら・・・、メインに出てくるイノシシの死体に生えたマルダイゴケの石焼。それぞれの料理と共に運ばれるシャーレに入った実物の苔をルーペで観察してから苔料理を食す。一日目だけを読むと、苔が物語の中心となる小説と勘違いするほどに、多種なコケが登場し、その描写も的確なのだ。


主人公はこの後も、お腹がすいてスコップ片手に公園で採取した苔を天ぷらにして食べている。コケという抽象的な書き方であれば、地衣類やシダや菌類も含まれるのかもしれないが、サヤゴケも、ギンゴケも、ムクムクゴケもみな蘚苔類(コケ植物)だ。


後半で出てくる十日町の芸術祭の描写などは、実際に訪れてみないとわからない部分まで、細かに描かれている。著者の小川洋子さんは、実際にこれらの苔料理を食べてみたのか、気になるところだ。きっといくつかはチャレンジしているに違いない。


”味については正しく判定できない。美味しいか美味しくないか、という基準に馴染まない味がする。” ”天ぷらならば天ぷらの味がするのだが、苔自体はその後ろに潜んでいてあまり前面には出てこようとしない”
この辺りの表現も、ジャゴケ料理に挑戦したものであれば、フムフムとなるのではないか。




さて、「原稿零枚日記」2日目までは、田中美穂さんの「胞子文学名作選」にも納められている。苔料理専門店を覗いて、色々な胞子文学(苔やキノコやカビなどが登場する文学)に触れてみたい方は、こちらもお勧めする。ただ、こちらを読んでも、その後が気になり、結局単行本を買うことになるのであろうが、、


「胞子文学名作選」編:田中美穂





そして、9月に都内某所で開催される、ジャゴケ食の会へ向け、ちゃくちゃくと準備を進める夏。








コメント